プロフィール

2017年1月8日日曜日

本当の意味での威厳

威厳を持っているか

【訳】

草や木は雪よりも霜を恐れる。霜は一見なんでもないようだが、
草や木を枯らしてしまうほどの威力を持っている。
一方、大雪は大変なことに見えるが、草や木にとっては
命に関わるようなことはない。民や兵は見た目の恐さや怒声、
あるいは罰ではなく、リーダーに威厳や威力があるからこそ
従うのである。

【書き下し文】

草木なるものは霜を懼れて雪を懼れず。
威を懼れて罰を懼れざるを知る。

【解説】

『君主論』を書いたルネッサンス期の思想家マキャベリはその著書
の中で「君主たるものは愛されるよりも、恐れられる存在になるべ
きだ」と述べています。

怖いということが抑制になって人を治める力になるのです。
怖さがないとなめられてしまうということでしょう。

しかし、威厳は怖さだけではありません。この人のために何かやり
たいと思わせるのも「威」の力でしょう。

              ▼

高校野球やサッカーなどで選手がよく「監督のために勝ちたい」
といった言葉を口にします。それは監督がとにかく一所懸命だから
です。監督の家に合宿して、監督の奥さんがご飯やお弁当まで作る。

試合となると、監督自ら選手を乗せたマイクロバスを運転して会場に
駆けつける。

そんなふうにリーダーが一所懸命にやっていると、いざという時に
「この監督を勝たせたい」「監督の奥さんを喜ばせたい」、
選手たちはそういう気持ちで戦うのです。

リーダーのために、この人のためにという気持ちは新たな気力を生み、
それがチームの力になっていくのです。

              ▼

ところがリーダーが嫌われていると、負けてもいいや、ひどい場合には、
そうすればあのリーダーが代わるかもしれないという気持ちにもなって
いくのです。

特にスポーツの世界は勝ち負けがはっきりしている、いわば「武」
の世界です。

リーダーの姿勢や部下にどう思われているのかもよく見えます。
「この監督は信頼されているな」とか「監督が変わればチームは
こんなに変わるんだ」ということもよくわかります。監督が怒鳴
ってばかりいて選手が萎縮しているチームもあります。

多くは語らなくても信頼関係で威厳を保っている監督もいます。
リーダーと部下という視点でスポーツを見るのも面白いものです。
「威厳のある人」、見回してみると、最近はそういう人が減って
いるのも事実でしょう。自分の世界を持ち、自分の価値判断基準を
持っている人、つまり自分を持っている人を見ると学生であっても
「威があるな」と感じたものです。

              ▼

しかし最近はそうした「威」を感じる確率が、以前より減ってきて
いるように感じます。では、どうすれば「威」が生まれるか。
一つには、エネルギーをかけて何かに打ち込んでいると、
そこに自分の考えや見識、判断基準ができ、そこに威が生まれて
くるのです。

わかりやすく言えば、鉄道ファンが鉄道について語ると、そこに威が
生まれてくる。仕事に関しても同様です。かけたエネルギーの分だけ
威が生まれるのです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 『日本人の闘い方』
 〜日本最古の兵書「闘戦経」に学ぶ勝ち戦の原理原則〜

 齋藤孝・著 致知出版社

致知出版社様より

押忍!

0 件のコメント:

コメントを投稿