プロフィール

2015年12月21日月曜日

無題

江戸時代に門弟三千人を数えた大儒学者・伊藤仁斎。

その仁斎と弟子が約300年前に行った問答を
一冊にまとめた書物が『童子問』です。

仁斎の畢生の大作と呼ばれるこの『童子問』を、
現代の碩学・渡部昇一氏がひもといた
『伊藤仁斎「童子問」に学ぶ』が
今月末、発売になります。

『童子問』で、師・伊藤仁斎とその弟子は
どのような問答をしているのでしょうか?

本書に収録された50篇の問答の中から、
その一篇をご紹介いたします。


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《質問》

 「天下に最も貴き善とはなんでしょうか?」



《回答》

「賢人を大事にすることより貴い善はない。

上は王・公爵から下は庶民に至るまで、
 いまだ賢人を尊ばずによく身を修め、
 四端の心を保って、大きな成果を挙げた者はいない。

 では、賢とは何かというと、
 それは自分より賢まさっている者すべてをいうのだ。

 ただし、賢ぶっているというのは
 学問のあるなしとは関係ないことだよ。

 こうした賢者を尊ぶことはとても重要なことであって、
 万事の本になる。後世の人々が古人に及ばない理由は、
 主として賢者への尊敬が欠けているところにある。

 時代が下がると賢を尊ばないだけではなく、
 賢人を妬み、あるいは侮り辱しめ、
 はなはだしくは世の中に認めさせないように
 邪魔をするようになってしまった」

            *

 世の中には良いことに敏感な人と、
 悪いことに敏感な人がいます。

 たとえば、田中角栄さんが多額の企業献金を
 もらったことを非常に問題視して、
 悪人であると敏感にいい立てる人がいる一方で、
 田中角栄がいたから日本中に道路ができ、
 道路ができたおかげで日本の自動車産業が興隆した、
 あるいは雪の多い地方に新幹線が通ったと、
 その功績をたたえる人もいます。

 同じ人物への評価でも、
 良いほうを見るか悪いほうを見るかは、
 その人の考え方次第で大きく変わってしまいます。

 世の中には良いほうは
 全く見たくないという人もいるようです。

 そういう人は、立派な人に嫉妬をしたり
 侮辱するようなことをしたり、
 悪い噂を流して世に出るのを邪魔したりするというのです。

 しかし、人の足を引っ張るような者が世の中で
 成果を挙げたという話は聞いたことがないと
 仁斎はいっています。


 谷沢永一先生は

「まことの賢人は、世間の密室を突き進んで、
 その上へと飛翔する気力と才覚の持ち主」

 といっています。

 嫉妬や噂に挫けるようでは
 本当の賢人にはなれないということでしょう。

 これもまた真実であると思います。




致知出版社様より



押忍!

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