プロフィール

2015年5月6日水曜日

今日の言葉3

本日、三つ目の今日の言葉となります。^^;

いつもありがとうございます。



☆☆☆

 八鹿小学校の去年の3月卒業した子どもの中に、
 雅樹ちゃんというやんちゃ者がいました。

 1年生、2年生の頃から女の子の便所のぞきをやる。
 1年生の時、家の金8千円も持ち出して
 むだ使いした事件がありました。
 お掃除なんかしたことがない。
「しなさい」と言えば、意地になってやらん。

 自分の席について勉強ができん。 
 授業中歩き回って皆の邪魔ばっかりしている。
 末恐ろしいやんちゃ者だ、という子だったんですが、
 3年生になった時、井上和昌という先生が担任してくれました。

 井上先生は、人間に屑はないということを
 信じ切っている先生でした。

 ものも言えないようなおとなしい奴は、
 自分のことよりも人の気持ちを先に考えてしまう
 心の優しい子どもの姿なんだと見てくれる先生。

 家ん中で大暴れして暴れてる奴は、
 何か燃え上りたくてウズウズしている子どもの姿なんだと
 見てくれる井上先生が担任してくれました。


 雅樹ちゃん、最初の日、この先生違うぞと思ったようです。
「明日から勉強する教室、きれいにして帰ろうや」
「先生、そんなら雑巾貸して頂戴」
 一ぺんも掃除せなんだ奴が雑巾貸せと言う。
 先生よろこんでしまいました。
「お前、掃除をする気があるんかい。えらいやないか」
 うれしゅうてならんもんやから手紙書きました。

「雅樹ちゃん、見どころありますよ。
 雑巾貸せ、なんて言うてくれるんですヨ。
 きっといい子になりたがってるんですよ」
 と手紙を書いて持って帰らせました。

 お母さん、感激してしまいました。
 文句は毎日のように知らせてもらいましたが、
"見どころがある"と知らせてもらったのは初めてです。

 感激して早速新しい雑巾を
 縫ってやってくれたそうですが、あくる日、
「先生、もう今日、雑巾借りんでもエエで、
 お母ちゃんが縫うてくれた」
 言うて雑巾を開きましたら、
 雅樹ちゃんがびっくりしました。
 開いた雑巾に、

「がんばれしっかりしっかり」

 と太い刺繍がしてあるんです。

「先生、ぼくの雑巾、こんなのがついとらァ」
「お前、すばらしい雑巾持ってるやないかい。
 そんなすばらしい雑巾、
 はよう校長先生に見てもらって来い」

 今度のことを心配している校長に、
 喜ばしてやろうということだったんです。

 ところが、やんちゃ者のくせに、
 一人でよう校長室に入って来ません。
 仲間を引きつれて、ゾロゾロ私の部屋へ見せに来ました。

 私も嬉しゅうてしょうがない。

「お前すばらしい雑巾持ってるやないかい。
 そんな雑巾、何万円出したって買われんぞ。
 そんな雑巾縫ってくれるお母ちゃん、
 ええお母ちゃんやなァ。
 そんなお母ちゃん世界中の国探したって、ありやへんぞ。

 そんな世界一のお母ちゃん持っとって、
 ええ子にならなァアカンわぃ」

 言うて、やんちゃ者に取り巻かれて、
 雑巾こんなにしているところ
(両手に拡げて持つ手振りなさる)
 を写真に写してやったんですわ。

 写真ができあがって持ち帰った頃から、
 自分の席について勉強しはじめました。
 お掃除、頑張りはじめました。


 間もなく5月に入って、
 子どもの日の記念日行事、
 お客様を招かない校内運動会をやったんですが、
 背は割合高いんですけれども、
 走るのがおそいもんですから、
 走らなならん時には、頭が痛いとか、
 足が痛いとか一ぺんも走ったことがない。

 ところが、井上先生が
「よーい」とやろうとしましたら、
 スタートラインに並んどる訳です。
 嬉しゅうてしょうがない。

 ニヤッとやったら、ニヤッと笑い返した。
 信じてくれる者に出合ったら、
 信頼で返さなアカン。

 それが"出合い"です。

「ドン」とやったら走ったそうですが、
 ビリから二番。井上先生はとんで行って、

「お前、やったやないかい。
 今日のお前、一番より値打ちがあるぞ」

 肩たたいて励ましてくれたんです。


 その朝、雅樹ちゃん、家を出る時、
「お母ちゃん、ボク今日走るけれどな、見に来るなよ」
 何べんもしつこく言うて家を出たそうですわ。

 4月以来の頑張りを思うと、
 お母ちゃん、じっとしとられません。
 洗濯も何もほっといて見に行って来たんやそうです。

 走ってくれたのも嬉しかったけれど、
 ビリから2番目の雅樹ちゃんの肩たたいて、
「お前やれるやないかい、
 今日の一番よりお前値打ちがあるぞ」
 と励ましてくれてる先生の姿を見たとき、
 何というすばらしい先生に
 めぐり合うことができたんだろうか。
 運動場の泰山木の樹の下で泣いてしまったと言います。

 そのあたりからますます頑張り屋になりました。

 人間屑はないんです。
 みんないい子になりたがっているんです。

 やんちゃ者は、やんちゃ者しか持たぬ
 やんちゃ者の値打ちを持っている。
 おとなしい奴は、おとなしい奴しか持たぬ
 おとなしい奴の値打ちを持っている。

 お子さんの値打ちがどこにあるのか、
 ちゃんと見てあげていただきたいですねェ。
 そして、それに出合うことで、
 私達の仕合わせも成り立つんじゃないでしょうか。



 ◆父母と教師に贈る東井義雄氏の不朽の名講話
  『子どもの心に光を灯す』(東井義雄・著)


致知より


☆☆☆


以上であります。



押忍! 石黒康之

0 件のコメント:

コメントを投稿