プロフィール

2014年2月6日木曜日

修行時代

以下の文章は、本日、致知出版社様から頂いたメルマガの一部であります。


どんな「道」を志すにしろ、

一流に、本物に、成ろうとすればするほど、

その修行時代は想像を絶する、厳しさ、辛さがつきまとうものであると思います。(でも、その厳しさ、辛さは、後から考えると想像を絶するほどの、嬉しさ、楽しさでもあると思います。)



その想像を絶する、「厳しさ、辛さ」、も、それを乗り越えた時には、

その「辛さ」に一本の棒が入り、

最高の「幸せ」になるのであると確信しております。


さて、

ワシ自身の修行時代をと振り返ってみますと………


いや、振り返るどころか、


ワシの様な凡人は、今、この瞬間が、

死ぬ直前までもが、修行時代の連続であると確信しております。


ワシは死ぬまでが修行時代なのであります。(笑)


その覚悟を改めて以下の文章にて再確認致しました。


どうか、御一読の程をお勧め致します。



*****
和製ジャック・ニコルソンの
異名を取る俳優・大地康雄氏。


その圧倒的な演技力で
多くのドラマや映画に出演し、
日本アカデミー賞助演男優賞など
数々の賞にも輝いています。


35歳の時、映画『マルサの女』で
ブレイクを果たしますが、
それまでの十数年間は
売れない苦悩の時代を過ごしたといいます。


これまで語られることのなかった
名俳優の修業時代とは
いかなるものだったのか——。


┌────今日の注目の人───────┐



「俳優になるんだったら一流を目指せ」
         

    大地康雄(俳優)

     
 ※『致知』2014年3月号
   連載「20代をどう生きるか」より


└──────────────────┘


劇団に入ってからは、
俳優修業とアルバイトの
二重生活が延々と続いた。


当然、田舎者の私にコネなどない。
30か所以上の芸能プロダクションを
飛び込みで回ったが、悉く惨敗。


そんな時、友人からガラス磨きの
アルバイトを紹介してもらった。


得意先探しで田園調布や成城といった
高級住宅街を一日50軒近く訪問しても、
断られる日々。


だが、あの時は俳優という目標に向かって
まさに無我夢中だった。


一分一秒無駄にしまいと、
夏場の炎天下で汗が噴き出していても、
次の家に向かう時は常に走っていた。


ガラス磨きをしながら、
大声で発声練習をしたり、
台詞を覚えたりと、
ご迷惑もかけた。


だが、そのひたむきさを
見ていてくれた人もいたのだろうか、
徐々にお得意先は増えていった。


そんな生活が続く中、
五反田近辺を歩いていると、
ある表札が私の目に飛び込んできた。


「伊藤雄之助」


黒澤明監督作品に数多く出演していた
名優・伊藤雄之助の自宅を
偶然見つけたのである。


私はすぐに弟子入りを懇願したが、


「うちはもう弟子を取らないことに
 しているから諦めなさい」


と奥様に一蹴された。


なぜかと尋ねると、
過去に何人か取ったけれども、
その厳しさに耐え切れず
皆辞めていったのだという。


その言葉に、むしろ私は燃え立った。


それから何度も自宅に通い詰め、
ガラス磨きをしながらチャンスを窺っていた。


そして8回目の訪問、
遂にその時は来た。


いつも通りガラス磨きをしていると、
伊藤先生が奥から出ていらした。


「君はしつこく来ているらしいけど、
 誰かの紹介か?」


「いえ、違います。
 僕は石垣島から出てきて、
 俳優になりたくてもコネがないもんですから、
 こうしてお邪魔させてもらっています」


すると先生は私の目をじっとご覧になって、
こうおっしゃった。


「明日から来てみるか」


私の諦め切れない執念が
先生に伝わったのだろう。


こうして1974年、
22歳の時に弟子入りを果たした。


心の中で「やったあ!」と叫びながら、
桜並木の坂道をジャンプして
帰路についたことをいまも鮮明に記憶している。


翌日からは厳しい修業生活が始まった。


最初は右も左も分からず、
叱られてばかり。


ある日、稽古の休憩中に、
台本を跨いでトイレに行ったことがある。


すると、間髪を容れず先生の檄が飛んだ。


「バカ野郎! 台本を跨ぐとは何事だ。
 俺たち役者はこれで飯を食わせてもらってる。
 そんな礼儀のかけらもないやつが
 役者になんかなれるか。ふざけるな!」


そういう人としての基本から
徹底的に叩き込まれた。


また、早く有名になって稼ぎたいという
私の野心を見抜かれたのだろう。


入門数か月後に、こんな言葉を
掛けてくださったことがある。


「おまえ、俳優になるんだったら一流を目指せ。
 その覚悟がなければ明日から来なくていい」


私が意味を取りかねると、さらに続けた。


「要するに人間の弱さ、愚かさ、 悲しさ、醜さを
 全部表現できるのが一流の俳優だ。
 そういう本物の俳優になって初めて、
 地位や名誉、金は自然についてくる。
 順番を間違えるな!」


頭を殴られたかのような衝撃だった。


それから私は本物の演技とは何か、
どうすればそういう演技ができるのかを
常に考えながら、
先生の演技を観察・研究し、訓練を続けた。


そんな私に最初の転機が訪れたのは、
26歳の時のこと。

  * * *

その後も度重なる苦難、困難をいかにして乗り越え、
師匠の言う「一流の俳優」へと成り上がっていくのか。

大地氏が語った「成功の秘訣」とは——。
*****


以上であります。


押忍! 石黒康之

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